【書籍紹介 #14】ジャック・ベンベニスト著「真実の告白 水の記憶事件」

皆さんこんにちは。店主のさしみです。

前回は仕事が山場を迎えていたのと、今回の記事を書くためのまとめる時間がとてもかかってしまったため、2週間ぶりの更新となります。ほんと本を読み解いて文章を書くのって難しいですよね…。

さて今回の記事はタイトルからあまりピンとくる人は少ないかもしれませんが、前回の記事で取り上げた「コロナワクチンの恐ろしさ」の源流ともいえるホメオパシーに関する書籍の紹介です。この「水の記憶事件」によってホメオパシーが一般的に周知され、江本勝「水からの伝言」へと繋がることになる重要な事柄だと私は考えています。そして2014年に大問題となり世間を騒がした小保方晴子氏の「STAP細胞騒動」にも通じる重要な参考資料にもなると思います。

この「水の記憶事件」の中心的人物は本書の著者でもある「ジャック・ベンベニスト(Jack Bevenitste)博士」です。彼は1935年にフランスで生を受けた科学者で、癌やアレルギーに関する研究で功績を残し、また自ら「デジタル生物学」を立ち上げるなど、精力的に研究活動を行っていました。

1988年に世界的権威のある英科学雑誌「Nature」で「高希釈された抗血清中の抗免疫グロブリンE(抗IgE抗体)によって誘発されるヒト好塩基球の脱顆粒化」という論文が掲載され、科学界に留まらず、世界を巻き込む大論争を引き起こしました。

本書「真実の告白 水の記憶事件 ホメオパシーの科学的根拠『水の記憶』に関する真実のすべて」は2006年にホメオパシー出版から発行されました。著者は「水の記憶事件」の張本人であるジャック・ベンベニスト博士。彼が88年にNatureに掲載された論文を巡った様々な論争や批判などを総括した1冊となります。

一見お堅い書籍の様ですが

★事前知識

それでは本書を読み解く前に2つのキーワードについて詳しく説明していきます。

①ホメオパシーとは

そもそも「ホメオパシー」とはどういうものなのか。話は聞いたことあるけど、ピンと来ていないという方に簡単にご説明していきます。

ホメオパシーとはドイツ人医師ハーネマン(1755~1843年)が始めたもので、レメディー(治療薬)と呼ばれる”ある種の水”を含ませた砂糖玉があらゆる病気を治療できると称するものと日本医師会「ホメオパシー」の対応についてというHPに記載があります。ホメオパシーは今から200年近く前に生まれた治療法のひとつで、”ある種の水”というのは対象となる病気の症状を引き起こす物質(鉱物や動植物の成分、毒など)を高希釈化した水溶液の事で、それをレメディー(砂糖玉)という形で摂取することで完治させるものです。また、その症状に効果のある物質を高希釈したものもレメディとして患者へ投与されることもあります。

このようなホメオパシー治療に対して、現代医療は「プラシーボ効果以上の効果は認められない」と結論付けられていますが、現代でも副作用のない代替医療として根強い人気があります。

過去には2009年に、山口県山口市で自宅出産で誕生した新生児がビタミンK欠乏性出血症による硬化膜血症によって死亡するという事故がありました。これは助産師が誕生後に投与されるビタミンKではなく、「ビタミンKの波動(オーラ)をまとったレメディ」を新生児に与えたため、本来必要なビタミンKが不足した事による事故と言われています。

②好塩基球の脱顆粒について

「水の記憶事件」に関して触れる為に必要な知識として、好塩基球の脱顆粒という現象を理解する必要があります。これはアレルギー反応に関するプロセスの一つで、アレルギー反応とは、

①体内にアレルゲン(ほこり、花粉)が侵入。

②情報がT細胞、B細胞へと伝達される。

③アレルゲンに反応するIgE(抗免疫グロブリンE)が生産される。

④IgEが肥満細胞と結合。

⑤結合したIgEにアレルゲンがくっつくと脱顆粒化し、炎症やかゆみを引き起こすヒスタミンを放出。

といった具合で発生します。ベンベニストは肥満細胞ではなく白血球の一種である「好塩基球」を用いてIgEに対する好塩基球の反応を実験で確認していたのです。その実験の中で研究員だったベルナール・ポワトヴァンがIgE溶液を高希釈した際の反応をみる実験をベンベニストへ申し出た事が、水の記憶事件へつながる端緒となります。ちなみに実験を申し出たポワトヴァンはベンベニストの下で研究する傍ら、ホメオパシー医師として活動を行っていた人物でした。

★水の記憶事件

さて、本書のメインテーマとなる「水の記憶事件」について触れていきましょう。先程キーワードとして挙げた「好塩基球の脱顆粒化」が大きく関わってきます。

・ホメオパシー的発見
ポワトヴァンとベンベニストは1981~82年にかけてIgE溶液を希釈していき、好塩基球の反応を確認していきました。当然、IgEが希釈されていくに連れて好塩基球の脱顆粒反応は弱まっていきます。しかし、10億倍(1/1000000000)という水準まで希釈を続けていくと弱まっていった反応が一転し、再び反応を始めたのです。彼らはこの実験結果を受けて1984~85年にかけて学術会議や論文として発表を行った結果、各所で論争を引き起こすことになります。科学界は批判的な反応が多かったものの、ホメオパシー界ではベンベニストらの論文はとても歓迎されました。それもそのはず、それまでホメオパシーは「原理が分からないが効果がある」というものだったのが、ベンベニストの発表によって科学的根拠を持った治療法として証明されたからです。

今回をきっかけに自分も買いました!

・Natureへの投稿と世間の反応
そしてベンベニストは1988年に世界的権威のある科学雑誌「Nature」へ「高希釈された抗血清中の抗免疫グロブリンE(抗IgE抗体)によって誘発されるヒト好塩基球の脱顆粒化」というタイトルの論文を寄稿します。Natureの査読を受け、ついに1988年6月30日333号に掲載されたのでした。
この発表は世界にセンセーショナルを巻き起こし、世間一般まで周知することになります。あるインタビューでベンベニストは高希釈溶液が脱顆粒化する原因について聞かれると「まるで水が記憶しているとしか考えられない」と答え、これがいわゆる「水の記憶事件」と称される原因となります。

ここで重要なのは、ベンベニストらは高希釈溶液がなぜ好塩基球の脱顆粒化を引き起こすのか結論を導き出せていない点にあります。彼は実験結果を世間に公表することで原因究明を促すのが目的でした。しかし、一部を除いて、科学界の反応は冷ややかで、この発表は批判や反論の的となってしまい、ついにはNatureが検証チームを編成し、実験の再確認を行うに至りました。

「Nature」と「Science」への掲載は輝かしい実績となる。

・再実験
1988年7月4日、Natureの検証チームがベンベニストの研究室へ訪れ、再現実験を行います。盲検法という手法で実験を行い溶液は暗号化され、どれが(IgEたっぷりの)コントロール溶液でどれが希釈された溶液か実験者には分からない様になっています。試験管にはそれぞれ符号が付けられ暗号化され、符号表は誰も触れられぬ様に封筒へ入れ、天井に貼り付けられました。

当初は良好な実験結果を得られていましたが、検証最終日にNature側から実験を2,3倍に増やされ、限られた時間の中で作業を行っていた中、とうとうコントロール溶液の試験管が出鱈目な結果を出し始めたのでした。

その結果を受けて検証チームは1988年7月28日に「高希釈の幻想か」というタイトルで、ベンベニストの実験結果は根拠がないものとして断じたのです。

★電磁波との邂逅

皆さんは電子レンジの仕組みをご存知でしょうか。分子はそれぞれ固有の振動数を持っており、電子レンジは水分子の固有振動数と同じ周波数の電磁波を食品へ照射し、水分子を振動させて温めています。

さてNatureとの攻防を行っているのと同時に、ベンベニストは好塩基球の脱顆粒化の他にランゲンドルフと呼ばれる、摘出したモルモットの心臓を試験管の中で機能させる装置を使用し、直接的に高希釈溶液の効果を確認する実験を行いました。
摘出前にアレルギー化された心臓にヒスタミンと卵白プロテインの高希釈溶液を投与すると、摘出心の心拍出量に25~30%の変化が確認されました。これらの溶液に対してコントロール液(水)に対しては影響は見られない事から高希釈溶液の効果をさらに裏付けることになったのです。

好塩基球の脱顆粒化とランゲンドルフ装置による摘出心の心拍出量の変化の実験結果から、ベンベニストは高希釈溶液による反応の活性化という現象に対して確固たる確信へ至りました。

しかし実験結果は揃ったものの、原因が不明のままです。そこでベンベニストは実験結果からある仮説を立てました。

■ベンベニストの仮説

高希釈溶液に有効成分となる分子は入っていないが、実験結果から明らかに高希釈溶液が反応を活性化させている。

▶活性は分子の影響ではなく、電磁気によるものなのでは無いか。

この仮説は突然ひらめいた物ではなく、イタリア人科学者であるプレパラータとデル・ジェディチェらが提唱する「コヒーレント・ドメイン(波動の干渉領域)理論」が基になっています。筑波技術大学の鮎澤教授によるとこの理論は、「水分子が電磁場で相互作用することで直径約100nmでそれ自体が電磁場をトラップした『コヒーレント・ドメイン』としての水分子集団が形成され、これが生体に様々な機能を与える」との事です。要は「水分子は電磁場で干渉し合う」ということです。とうとうベンベニストは電磁波と出会ってしまったのです。

近年のトレンドは「5G」

この理論から高希釈溶液の活性を説明すると、希釈前の溶液の構造を水分子が電磁場として記録しており、たとえ高希釈化して有効成分の分子が失われていても水分子の電磁場が変化しないため、高希釈化溶液でも活性されるという事です。

この理論を受けてベンベニストは1990~1991年にかけて高希釈溶液を電磁場に長時間曝す実験を行います。結果は今まで高希釈溶液で発現していた現象が停止したのです。高希釈溶液に電磁場をあてた事によって水分子の電磁場が変化し効果を失ったのです。これはベンベニストの仮説が証明された瞬間でした。

しかし一般的に水分子の固有振動数は1THz(10の12乗)という赤外線に近い周波数帯と知られていますが、ベンベニストが試験管に曝した電磁波は家庭用の電源である50Hzだったのです。
でも安心してください、低周波数帯域において離れた場所にある水を伝送することはホメオパスの間では何度も確認されていた現象だったのです。

★デジタル生物学の創設

1995年、ベンベニストはコンピュータによる分子の固有振動数の記録・再生の実験を実施しました。先述したとおり、水の固有振動数は1THz(10の12乗)という帯域にも関わらず、このコンピュータが搭載していたサウンドカードは20,000Hzの記録、再生しか出来ないものですが、彼はその装置を用いて分子の固有振動数を記録し別の溶液へ振動を再生することで、効果を再現することに成功しました。彼はそれを「その分子があたかも実際に存在することを”信じ込ませる”事に成功した」と表現しています。

彼が成功させた分子の伝送実験の20,000Hzの帯域というのは人間の可聴音域と同じであるため、分子は人間の音声や音楽と密接な関係があるとも説明しています。

・江本勝「水からの伝言」
ベンベニストの考え方は世界中へ波及し、もちろん日本にも入って生きています。その代表的な例としては江本勝が1999年に発表した「水からの伝言」でしょう。
この「水からの伝言」で江本勝は「『ありがとう』と書かれた文字を水に見せると、ポジティブな波動が水の分子に作用し、その水を凍らせた時に作られる氷の結晶は美しい形になる」という主張をしています。さらに人間の70%は水分で構成されているので、ポジティブな言葉をかけましょうという内容で、この本が小学校の道徳の教科書として使用されたという話もあり、未だに「水からの伝言」に影響を受けた人は国内でも多く居ます。
私が訪れた南千住のたこ焼き屋「パワーブレンド」の店主もこの本に影響された一人です。このお店はまたいつか紹介させていただきます。

また、サボテンや植物に話かけると電流(圧?)計が反応するというのも、この考え方が一部影響していると私は考えています。案外、こういった話は血液型性格判断と同じ様に日常的に話をしている読者の方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。

感謝は大切だけども

★ベンベニストの心理

最後にベンベニストの心理について私の考えを書き連ねて行こうと思います。

まず本書を読んで私が感じたのは、彼が「権威」に対して強い羨望と絶望を抱いているという点です。ベンベニストはフランスにおけるアレルギー治療の第一人者で、数々の功績を残してきました。彼は自由な気風であふれたアメリカの研究所から故郷のフランスへ戻り、国内で最も権威のあるINSERM(国立保健医学)研究所へ入所します。そこで彼はフランス科学界の権威主義に憑りつかれ、学派やグループの対立や新しいものを受け入れない体制に違和感を覚え、強い憤り感じていました。そんな彼が出会ったのがホメオパシーだったのです。

実験で有効成分となる分子が入っていない高希釈溶液(要は水)が現象を発現するという、一般的な考えではとても理解できない結果が出たとき、きっと「権威」というものの鼻を明かしてやろうという気持ちになったのではないでしょうか。まずは国内で発表を行い、そして世界的な権威のある「Nature」に寄稿する事になります。論文は掲載されたものの、世界的な論争へと発展し、ベンベニストはまた多くの権威と対立することになるのです。

また小保方晴子氏の「STAP細胞騒動」と同じように、実験手法や再現性、データの扱いに対して非常に疑問が残る点があります。盲検法と呼ばれる実験方法で実験者の意図(悪意)が影響しない様に実験しているという主張がいたるところでされています。しかし、符号表の管理が曖昧だったり再現性が低いという印象は否めませんでした。「STAP細胞騒動」でも彼女の実験ノートや再現性が問題に挙がっていましたが、実験というのは気温や湿度、使用機器の情報、その他実験手法を事細かく記載する必要があり、その論文を読んだ人間が全く同じ条件で再現できる必要があるのです。門外漢なので的外れな指摘かもしれませんが、特に生物を扱う実験において、生物ほどファジーなものはありません。ちょっとした環境によって大きく結果が左右されてしまうため、実験方法やデータの扱い(統計)が重要になってくるのです。

正直、このムーミンのイラストとセリフは好き

激しい批判や反論に対して誠実な対応をしていた彼ですが、己の仮説がいつしかパラノイアとなっていきます。本書を読み進めていくと確証バイアスに囚われた発言や被害妄想的な発言が散見されるようになり、実験内容もどんどんおかしな方向へ移行していきます。そしてとうとう「電磁波」と出会ってしまったのです。

ベンベニストが発見した事象は批判の的となりました。彼はコペルニクスやアインシュタインと自分を重ねていましたが、なんとも言えない気持ちになります。しかしながら一部とは言え、彼の研究は現代でも脈々と受け継がれ、つい数年前は水素水というものも注目されました。

天動説と戦う漫画

人間と水、決して切っても切れない関係が続く以上、こういった問題は今後とも起きていく事でしょう。そんな時に、ベンベニストの「水の記憶事件」を思い出してみてはいかがでしょうか。

前回に引き続き疑似科学の話になりました。今回はかなり内容が濃く、わかりにくいかも知れません。しかし、一人の科学者が一つの実験結果に翻弄されて、パラノイアに囚われ、そしてフェードアウトしていく様をリアルさを感じ読む事ができた名著です。ついつい熱が入りすぎてしまいました笑。

ぜひ興味がある方はお手に取っていただければと思います。

それでは次回も楽しみにお待ちいただければと思います。

店主さしみ

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