【古書店ヨミアルキ#2】東京 神保町「夢野書店」

皆さんこんにちは店主のさしみです。

最近は、まん防だの緊急事態宣言だのと不穏なワードをよく耳にします。
なかなか遠くへ古本屋めぐりも出来ない方がいる事でしょう。

ですので今回は「古書店ヨミアルキ」シリーズ第2回ということで、東京は神保町の老舗漫画古書店である「夢野書店」さんを紹介させていただきます。

夢野書店さんは数年前に店主さしみが制作した同人誌でも紹介させていただきました。

当時はわざわざ時間を作っていただき、とても興味深いお話をさせていただいた事を覚えています。店内の撮影も快く許可していただいたので、今回は店内の写真存分にお見せしながらご紹介出来たらと思います。

本題に入る前に手前味噌ですが、先程お話しました同人誌「ヨミアルキ」はBOOTHと名古屋のBiblioManiaさんで販売しておりますので興味を持った方は是非お手にとっていただければと思います。

残念ながら今回取り上げる夢野書店さんを紹介したVol.1は絶版になっておりますが、東海地方の古本屋を紹介するVol.2はお求め出来ます。詳細はコチラ

◎神保町の漫画専門古書店「夢野書店」

それでは本題に入っていきましょう。

夢野書店さんは言わずも知れた日本一の古書店街「神保町」にお店を構えています。お店へは都営三田線、都営新宿線、東京メトロ半蔵門線が乗り入れる「神保町駅 A5出口」より靖国通りを九段下方面へ約2分ほどです。すると目の前に「神田古書センター」という看板がかかった複合ビルが見えてくるので2階へ上がればお店へ着きます。

●夢野書店

住所 :〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター2F
電話 :03-6256-8993
HP  :http://www.yumeno-manga.com/index.html
営業日:10:00~18;30(平日)、11;00~17:30(日曜祭日)
休業日:第1・3日曜日、年末年始(12/31~1/4)

店内に入ると中央にはショーケース、左右には天井まで伸びた大きな棚に綺麗に本が陳列されています。
店内には本だけでなくグッズなども置かれているのでまるで駄菓子屋のような賑やかさとどこか懐かしい印象を受けます。

視界に入るもの全て漫画と関連グッズ!

夢野書店さんの前身は神保町にあった「中野書店」さんの「漫画部」が独立したお店です。
「中野書店」と聞いてピンと来た方はかなりの古本漫画マニアでしょう笑。

実は中野書店の創業者である中野実氏は日本で初めて手塚治虫作品に値段を付けたということで業界内では有名だそうなんです。

さて、話をもどして店内の棚について紹介します。
夢野書店さんの店内は入り口から左手が雑誌、中央が漫画関連書籍や稀覯本、グッズなどが置かれたショーケース、そして右手は少年、青年マンガという構成になっている。

雑誌コーナは少年・少女系だけではなく、奥へ進むとガロやCOM、COMICばく等のマニア系雑誌と別冊が陳列されています。その棚の中でも興味深いのが雑誌の切り抜きを集めたコーナです。こういうものを扱った古本屋は今まで見たことがありません笑

雑誌は年代別に並べられているので目的買いも楽ちんなのは嬉しいですね。

雑誌は年代別に陳列されている
両脇にびっしりと漫画雑誌が!
奥には別冊をはじめガロやCOMなどマニアックなものがびっしり!

中央の品揃えに注目すると、左側は漫画関連書籍がずらっと並べられており、漫画の描き方や批評本、謎本などが目に付きます。奥にはサイン色紙や原稿も置いてあるのでただ眺めるだけでも飽きません。

店内中央にはショーケースが置かれ、漫画関係のグッズや稀覯本が置かれています。ショーケースはこれ以外にも店内にいくつかありますので、見ておくだけでも眼福ものです。

内田善美、安くない?
まるで博物館!

そして右側は少年・青年コミックコーナです。棚は作者別に陳列されているのでとても探しやすくて助かります。セット売りも充実していて、天井まで積まれているので見逃さないように注意しましょう。

びっしりとセット売りの本が陳列されてる
少年・青年漫画もとても充実

改めて撮影させていただいた写真を見返すと気になる本がいくつも目についてしまい、すぐにでもお店へ行きたくなってしいます笑

お店の印象として貴重な漫画多数そろえていますし、関連書籍やグッズなども充実しています。なにより夢野書店さんの魅力は、居心地の良さとワクワク感でしょう。
以前お話を伺ったときも楽しく過ごせる店作りを目標にしているという事を仰っていたので、それが店の雰囲気として体現されているのでしょう。

◎古本屋がつなぐ縁

そして最後に夢野書店さんにまつわる面白い話があります。
冒頭でも書きましたが、店主さしみが制作した古本屋さんを紹介する「ヨミアルキ」という同人誌の企画の中で、以前運営していた漫画コミュニティに参加してくれていた方々に古本にまつわる思い出話を寄稿して貰ったことがあります。

その中の一人が投稿してくれた手塚治虫「千夜一夜物語」にまつわる思い出が、同人誌の制作によって面白い展開になったのです。まずは寄稿いただいたコラムを読んでいただきましょう。

◎「古書のぬくもり」 文:泡ガエル

 手塚治虫の劇場用アニメで、「千夜一夜物語」というものがあったのを、どれだけの人が知っているだろうか。それは、1969年に虫プロダクションが総力をあげて制作した日本初の“大人向けアニメ”であった。当時、話題性はあったものの、性描写や女性のヌードシーンがあったために、上映期間は短くTV放映もされなかった。後年、LDやDVDが発売されるまでは、幻の手塚アニメとしてファンの中でひっそりと語り継がれるだけの存在であった。そういった意味で、劇場公開と同時期に発売されたアニメ画集、「おとなの絵本・千夜一夜物語」(筑摩書房)は、劇中の内容を知る唯一の手掛かりとして、当時、大変な価値をもっていた。

 月日は流れて、私が両親と同じく手塚治虫を読むようになると、両親は決まってこの「千夜一夜物語」の話を私に聞かせた。それは本の内容というより、東京から遠く離れても長年に渡ってお客の注文をずっと覚えていてくれた古書店の誠実な対応を喜ぶものだった。

私はこの話を聞く度に、一冊の古書を巡る、人と人との繋がりを強く感じたものだった。そこには新書にはない、古書がもつ、人のぬくもりがあった。現在は、クリック一つで古書が手に入る便利な時代だが、たまには、そのぬくもりを求めて古書店を巡ってみるのも悪くないだろう。もしかしたら、そこで自分の子供に語って聞かせたくなるような、運命の一冊に巡り合えるかもしれない。

なんとコラムの中で出てくる古書店とは夢野書店さんの前身である中野書店さんだったのです!偶然とは言え古本もとい古本屋を通じて人との繋がりを感じ、なんだか嬉しくなってしまいました。

現在は古本屋も厳しい時代が続いていますが、こういったお店は末永く続いて欲しいものですね。皆さんもコロナが落ち着いて神保町へ行く機会があれば是非、寄ってみてはいかがでしょうか。本だけでなく新しい縁が繋がるかもしれません。

それでは次回をお楽しみにお待ちください。

店主さしみ

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