【書籍紹介 #6】手塚治虫「ブラックジャック4巻(9版)」

みなさんこんにちは
店主のさしみです。

最近、50年以上前のターンテーブルを手に入れまして絶賛レストア中です。
どんどん古いものに囲まれていって幸せですね。

今回は古本コレクターや手塚治虫ファンには必読な内容になりますので、是非最後まで読んでいただければと思います。

さて、今回紹介する漫画は誰もが認める不朽の名作、手塚治虫「ブラックジャック 4巻(9版)」です。
詳しい人は既にピンと来ているかもしれませんが「何故4巻なのか」、「わざわざ9版と書いているのはなんで?」と思っている方もいるかも知れませんので、ブラックジャックの未収録作品から話をしていこうと思います。

初期は「恐怖コミック」扱いだったブラックジャック

まずはブラックジャックの基本的な紹介をしましょう。

・ブラックジャックとは

ブラックジャックは週刊少年チャンピオンで1974年11月から1983年10月まで242話に渡って連載された作品です。未だにい愛読している人も多く、世代や性別を超えて愛されている名作中の名作です。2012年には吉本浩二と宮崎まさるがブラックジャック連載中の手塚治虫をドキュメンタリー方式で描いた「ブラックジャック創作秘話」が「このマンガがすごい!」を受賞したのも記憶に新しいですね。

・未収録作品

続いてブラックジャックの未収録作品についてです。

ブラックジャックは社会的で生命をテーマに扱ったエピソードが多く、人権的な観点などで内容はおろか単行本への収録がされていない作品がいくつかあります。
ブラックジャックを読むに当たって現在比較的に入手可能なモノは5種類あります。

  • 週刊少年チャンピオンコミック(新書判)/秋田書店
  • 新装版 ブラックジャック(新書判)/秋田書店
  • BLACK JACK(文庫版)/秋田書店
  • 手塚治虫文庫全集(文庫版)/講談社
  • ブラックジャック大全集(B5版)/復刊ドットコム

これらはシリーズによっても収録されている作品に違いがあり、中には単行本完全未収録となっている作品も2作品あります。

この中で一番収録数が多いのが復刊ドットコムから発行されている「ブラックジャック大全集」ですが3作品だけは収録されいませし、手塚プロダクションの意向で今後も収録される見込みはないのです。

・「指」、「快楽の座」、「植物人間」

未収録作品となった3作品のタイトル名は第28話「指」、第41話「植物人間」、そして第58話「快楽の座」となります。今回はこの3作品の中でも「植物人間」に着目してお話します。

「植物人間」は他2作品とは少し毛色が違っています。それは週刊少年チャンピオンコミック版4巻の第18版(確証なし)までは収録されていたのですが、それ以降の版では第70話「からだが石に・・・」へ差し替えられているのです。
ですので、完全未収録となっている他2作品と違って初期の4巻には収録されているという稀有な作品です。しかし、今後発行されるブラックジャックには収録される見込みがないため、単行本で読む場合は初期の版を探さざるを得ない状態です。ヤフオクでは3000円から5000円程の相場で取引されています。

それでは植物人間のあらすじです。

・植物人間(あらすじ)

宮崎へ向かうフェリーに乗船していたブラックジャックだが、濃霧によって別の船と衝突する事故が起きてしまう。命からがら救命ボートへ乗り込んだのだが、ある女性は心臓マッサージが必要だったにも関わらず適切な処置がされないまま植物人間となってしまった。
母親が植物人間になってしまい、途方に暮れてしまった息子にブラックジャックは母親と息子の脳を電極でつなぎ、電気ショックを与えて反応を見るというモノだった。ほとんど人体実験ともいえる凶行に担当医は反対するが、息子の強い意志によって手術が行われることになる。

頭が開かれ、母親と息子に電極が繋がれる。
そして電圧をかけてみるものの、脳波計に反応は無かった。
しかし、術後にブラックジャックが息子へ訪ねてみると母親の存在をはっきりと感じ、母親を治療するために将来医者になる事を誓うのだった。

このエピソードが未収録となった理由は人権的な問題だとか、人体実験的だからとか言われていますが、はっきりとした事は分かっていません。
初期のエピソードに人間を鳥人間へ変えてしまう手術をしたり、心霊手術が登場したりとトンデモなものが多いので、人体実験という話は違うかもしれませんが、果たしてこの手術の意味が本当にあったのかはわかりませんね。

とはいえ、この作品は今後も単行本に収録されることがないので、気になる人は是非読んでみてください!

・4巻の魅力


さて、ここからは余談になりますが、4巻の魅力は「植物人間」だけではありません。
他の収録作品もとても読み応えがありますので、簡単に紹介しましょう。

・「しずむ女」


晦日市で発生した公害によって知能低下と歩行障害になってしまった「ヨーコ」の話です。障害のため行政や町の人からも無下に扱われていたヨーコですが、とても無垢で愛嬌のあるヨーコがとにかく可愛い。手塚ヒロインの中でも屈指のキャラクターです!ブラックジャックの事を「オニイチャーン」と呼んで抱き着くシーンがなんとも・・・

ヨーコは海に潜って魚を取るのが得意だったのですが、公害によって足に障害を負ってしまってから海に潜るのはおろか、歩く事すらままならなず乳母車を木の棒で押して街を移動していました。
彼女はいつかまた海に潜って魚になる事を夢見ていたのです。

公害によって蝕まれた身体もブラックジャックの手によって回復の兆しが見えてきました。今まで書けなかった文字を書けるようになったのですが、まだ全快ではないにもかかわらず、ブラックジャックへ魚を取ってくるという書置きを残し海へ潜り、ヨーコはそのまま帰ることはなかったのです。

黒男どんな顔してるんだろう

・「2人のジャン」

一人の身体に二つの頭。いわゆる「シャム双生児」を取り扱ったエピソード。シャム双生児の「ジャン・マルシャン」は脳を1つ半もっていて、片方が覚醒しているともう片方は眠っていますが、お互いの意識は共有されています。脳が1ツ半あることから栄養不足によって1年以内には死亡してしまうため、片方の脳を切り離す手術をブラックジャックに依頼してきたのです。

ブラックジャックは手術を成功させ、切除された脳は培養液へ入れられました。術後3週間がたち、回復したジャンが培養液に入れられた脳を前にすると突然。装置を壊してしまうのです。

それは手術前にどちらかが残った方が壊す事を約束していたからです。

そして「ぼくたちは実験動物じゃないよ、実験にされるなら死んじゃったほうがいいんだい」と叫ぶジャンを前に何も言えないブラックジャックと医者たちの表情が印象的です。

今読んでも心打つ悲しい話

この2作品以外にもブラックジャックは名作エピソード揃いです。
まだ未読という人はとにかくもったいない!
これを機会に是非、手に取って読んでいただきたく思います!

それでは今回はここまでです。
また次回をお楽しみにお待ちください。

店主さしみ

おすすめの記事