【書籍紹介】 #3 長尾謙一郎「ギャラクシー銀座」

「おのれのパンツは宇宙一穢い!!!」
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みなさんこんばんは。ミッドナイト・キッスこと店主さしみです。

今回紹介する書籍は長尾謙一郎「ギャラクシー銀座」です。

本作は2007年~08年にかけて週刊ビッグコミックスピリッツに連載され、単行本は全4巻となっています。
作者の長尾謙一郎は「ギャラクシー銀座」より以前は1999年より週刊ヤングサンデーにて「おしゃれ手帖」を連載し、その後も「PUNK」や「クリームソーダシティ」などを発表し、現在は「三日月のドラゴン」を月刊!スピリッツにて連載してます。

作風は不条理モノが主体で突飛な展開やシチュエーション、シュールな世界観や意味不明ながらも小気味の良いセリフ回しが得意です。今回紹介する「ギャラクシー銀座」も不条理ギャグが主体ながらも何か奥歯にモノが挟まるような独特な世界観なのですが、終盤に向かうにつれて加速度的に展開してくストーリー運びはファンを魅了しています。

続いてあらすじを簡単にまとめてみました。

◆あらすじ

国民的シャンソン歌手「ココ北古賀」を父親に持ち、10年間部屋に引きこもっている主人公「竹之進」。竹之進は毎夜毎夜、ロックスター「ミッドナイトキッス」として部屋をライブ会場に見立ててライヴ(いたずら電話)を繰り返していた。


ある日、息子の竹之進を溺愛する母親「マミー」は竹之進のおねだりを受けて覚せい剤を買いに繁華街へ出かける。そこで掃除用ロッカーの中にいた山下達郎から奇妙な形をした棒を受け取った。
最新型と言われたその覚せい剤(?)の使用方法はへそから大腸にねじ込むもので、嫌がる竹之進をなだめつつ大腸に覚せい剤(?)を挿入した。


覚せい剤をキメてから竹之進は奇妙な夢をみたり、頭の中に3人の中年女性がいたり、「竹藪」というワードがちらつき始める。そして、ある電話をきっかけに物語は急加速し始めるのだった。

不条理漫画のあらすじは文字に起こすのが非常に難しいですね笑
テーマとしては一本筋があるのですが途中全く関係のない場面へ展開したり、関係ないと思っていた物語が繋がったりするので1度読んだだけでは読み解くことは難しいと思います。

登場人物

それでは整理しやすくするために主要登場人物の説明をしましょう。

北古賀 竹之進(主人公)

本作の主人公。

国民的シャンソン歌手である「ココ北古賀」を父親に持つ。10年来の引きこもりで母親こと「マミー」を溺愛し、母親も竹之進の事を溺愛している。普段、ライヴと称してイタズラ電話を繰り返しているが、将来への不安や父親へのなんとも言えない嫉妬心に悩んでいる。最新式の覚せい剤を大腸に挿入したことによって意識が覚醒し始める。

マミー

竹之進の母親。

息子を溺愛している。引きこもっている竹之進に対して何も感じないどころか、大人へ成長する事が無いように4歳くらいの子供をあやすように竹之進に接している。「かすみ会」というママさん合唱サークルに所属しており、曲が最高潮へ迎えると宇宙人を吐き出してしまう。竹之進がとった電話をきっかけに徐々に狂い始める。

ココ北古賀

竹之進の父親。

国民的シャンソン歌手。「チンモルケ」のヒットによって大金持ちになった。終始、意味深のようで意味不明な言動を取るが、終盤へ繋がる重要な言葉を竹之進へ送る。

ハスキー美美とポーやん

男女デュオのロックバンド。

ライブでは終始「竹藪」について語っている。どこかの宗教と関係が?

コニー

竹之進へ電話をした人物で、エッチな言葉を駆使して竹之進を誘惑する。本人曰くエビちゃん似らしい。

余談であるが店主さしみは高校生時分にエビちゃんこと蛯原友里にハマってた。

ハリス漆原

店主さしみが個人的に好きなキャラクター。

自らの筋肉が発する熱によって北極の氷が溶けてしまってると危惧しつつも、筋肉を誇示するのが止められない。

同性愛の気質があり、竹之進がハリス漆原が経営するジムに来た時は、お付きのボーイをそっちのけで竹之進にご執心だった。物語との関連性はほぼない。

最後のキャラクターは個人的なものです笑

「ギャラクシー銀座」読み解き

続いて店主さしみが個人的にこの作品を読み解いてみたので、書きなぐってみました。未読の人にはネタバレ以前に何を言ってるのか全く分からない文章かと思いますがご容赦ください笑。

この作品の主軸となるテーマは「今の自分を破壊しろ」だと思います。10年間の引きこもり生活を送っている竹之進はなに不自由なく過ごしているものの、ぼんやりとした不安に葛藤しています。

マミーは竹之進を幼い子供のように接することから、竹之進が成長(変化)することを許せないです。しかし覚醒剤をキメたことがきっかけで竹之進の中で何かが動き始めます。頭の中に出てきた「竹藪に入る」というワードは、人生の中では意を決して一歩踏み出さなければならないという事を示唆していたのです。

そして父親の言葉に惑わされ、コニーによって最悪な童貞喪失経験をしたことによって1歩も2歩も成長(覚醒)する事になります。

とうとう一歩を踏み出し始めた竹之進に対して、その現実を受け入れられないマミーによる凶行が始まります。
これは栗博士によって発見された「人間に寄生して恐怖心や自己嫌悪を助長する宇宙人」によるものなのです。

それが覚醒しはじめた竹之進の前に立ちはだかったのです。そして父親が残した「イメージ」によって竹之進は自らマミーから射殺されることによって、自分が過ごした宇宙を破壊して新しい宇宙へ本当の一歩を踏み出すのです。

おわりに

一見、不条理ギャグを散らかした様に見える作品ですが、一つ一つの展開が終盤に向けて加速度的に融合して一点へ収束していく様はなんだか心地よくて宇宙へ飛び出していくような陶酔感があります。

まだ何か引っかかる箇所があるので、もしかしたら全然違う解釈をしてるかもしれません。新しい発見があれば都度、アップデートしていきたいですね。

ギャラクシー銀座は20年11月から12月にかけて劇団子供鉅人さんで舞台化されました。店主さしみも観覧したのですが これが素晴らしい。あの不条理な世界観をそのまま舞台で再現できるのかと感動を覚えました!
もちろん世界観だけでなく物語の運びや解釈も同じなので違和感がなく見ることができました。「走るホストクラブ ニューファラオ」の再現率の高さには特に見ものです。あまりの出来の良さに2回も観に行ったのはココだけの話です笑。

劇団子供鉅人 ギャラクシー銀座特設ページ:http://www.kodomokyojin.com/galaxy-ginza/

はじめて長尾謙一郎作品に触れる人にはなかな手が出しにくい作品ではありますが、案外テーマは分かりやすくて長尾節のギャグを楽しめるならば後悔する事は決して無いでしょう!

他の作品についても機会があれば紹介させていただきたいと思います。

それではまた次回をお楽しみください。

店主さしみ

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